斜光
定時を過ぎ、残業にとりかかろうとしたとき。
ふと外を見るとオレンジ色の光が差していた。
タバコを吸いに外に出てみると、辺りが暮れなずむ中で少し強く、しかし暖かい光が道路いっぱいに広がっていた。
秋の夕暮れの優しい光とは違い、少し尖った感じの光が自分の足元を照らし、ワザとタバコの煙をその光に被るように吐き掛けてみた。
なぜか懐かしい気持ちになるのはナゼだろう。
そう思い馳せてみるものの、何も思い出しては来ないのだ。
しかしこの名状し難い不思議な感覚に仕事が手に付かず、いそいそと会社を後にする。
たまたま詰めていたカラーネガで駐車場までの道のりをブラブラ歩きながら数枚撮り、そして途中で差し掛かった、すでに廃墟に近いボロボロの倉庫の前でふと立ち止まった。
サビが回ったトタン板にあめ色のような斜光が跳ね返り、なんとも言えない光景だった。
こんな写真撮ってもな、と一寸思いもしたがふと思い出した。
以前にも俺はここで同じような写真を撮っていた。
きっと何かを感じて撮ったに違いないのだが、それが上手く表すことができなかったことを思い出した。
そしてまた同じように繰り返してシャッターを切っていた。
きっかけは何でもいいと思う。
分からない人にはさっぱり分からないだろうが、自分の記憶の欠片として残ったもの、俺の写真なんてそれで十分なんだ。